【産科医に聞く】妊婦さんに良い水/赤ちゃんに良い水

2014.10.03

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妊婦さんや赤ちゃんのデリケートな身体には、毎日飲む水がとても大事に思えます。「妊婦さんにやさしい水」「赤ちゃんのための水」といった謳い文句の水が、たくさん販売されていますね。

 

ミネラル豊富な硬水より負担の少ない軟水が向いている、というのが大方の説のよう。でも、果たしてそれは本当なのでしょうか?

水ラボでは医学的な観点から検証すべく、産科医の竹内 正人先生に取材しました。


 -妊婦さんは水をたくさん飲むように、勧められますね? 

竹内先生 妊娠すると、血液量が50%も増加します。当然、身体は水分を欲しているわけです。通常時は体重60kgの人で、1.2リットルの飲み水が必要だといわれていますが、妊婦さんの場合、2~2.5リットルでも飲み過ぎではありません。

水分が足りなくなると、血がドロドロになり、血栓ができるリスクも高まります。水分が多くなると、むくみなどの症状が出ることはありますが、それでも血液をサラサラにして、子宮の中の赤ちゃんへ酸素や栄養を運ぶためにどんどん循環させるほうが、メリットは大きいのです。

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-どんな水を飲むと良いのでしょうか?

竹内先生 妊婦さん向けに、硬度が0に近い超軟水/ピュアウォーターが販売されていますが、私は必ずしもお勧めしていません。確かに、私たち日本人にとって、軟水は口当たりが良く、内臓への刺激も少ない。しかし、一定のミネラル分を含む硬水も、合わせて摂ると効果的です。

 

硬水に含まれるマグネシウムは、妊娠高血圧症候群の予防に、良い働きをするという調査もあります。また、適度なミネラルは腸を刺激し、活性化させるので、妊婦さんに多い便秘の改善が期待できます。私たち産科医も、妊婦さんにマグネシウム剤を処方するくらいです。

気持ちの良い便は、心身の健康を示すバロメーターだと考えてください。免疫力の維持や妊娠中のストレス、マタニティブルーの対策にも、腸を活発な状態に保つことが重要なのです。

私は、経過の良好な妊婦さんには、朝コップ一杯の硬水をおすすめしています。疲れているときは、炭酸水で、内臓に少し強めの刺激を与えるのも良いでしょう。

ただし、硬度が1000mg/Lを超えるような超硬水は刺激が強すぎます。また、便がやわらかすぎるようでしたら、飲用を控えてください。

 

反対に、夜は腸のはたらきを沈めたいので、軟水を飲んでください。といっても、浄水器を通した水道水や、コンビニなどで手軽に入手できる30mg/L程度の軟水で結構です。多くの方が好む硬度だといわれていますが、おいしく飲むのもまた大事なこと。

ただし、妊婦さんに冷えは禁物ですので、常温で飲みましょう。

 

-赤ちゃんにとっては、なおさら水が重要ではないでしょうか?

竹内先生 赤ちゃんは、身体の80%近くが水分で、新陳代謝がさかんです。妊婦さん以上に水分を欲しています。絶対に不足しないようにしてください。

しかし、生後6カ月までの赤ちゃんには、母乳またはミルクのみをあげてください。水やお茶でお腹いっぱいになると、ミルクが飲めず、栄養が不足する場合があります。

 

6カ月を過ぎた赤ちゃんには軟水が適しています。硬水は負担が大きすぎるためですが、こちらも超軟水やピュアウォーターにこだわる必要はないと考えています。

水道水を浄水器でろ過し、塩素などの異物を取り除けば十分。30mg/L前後の軟水は、赤ちゃんもよろこんで飲んでくれるはずです。適度なミネラルで、腸を活発化させてあげてください。

 

-赤ちゃんの腸が活性化すると、どんな良いことがあるのでしょうか?

竹内先生 身体の免疫力は、腸のはたらきによって、大きく向上したり衰えたりすると、考えられています。特に、人は生後1年ほどで腸内環境を整えますから、赤ちゃんの時期に飲む水も、その後の健康に関連する可能性があります。

 

大切なのはバランスです。お腹を壊してしまったときなどは、負担の少ないピュアウォーターも良いでしょう。しかし、不純物を排除することだけに、躍起になるのは考えものです。

私は、適度なミネラルを含んだ水が、赤ちゃんを健康にすると考えています。


 

ちまたでは、 「妊婦の水」「赤ちゃんの水」と、さかんにいわれている割に、根拠のあいまいなものが多い印象です。研究も確立されておらず、専門家の中で意見が異なるのも確かでしょう。それでも、医師の話をお聞きできたのは非常に貴重な機会でした。

 

「腸を整える」という観点で、妊婦さん、赤ちゃんが飲む水を考えてみてはいかがでしょうか?

 

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●竹内正人プロフィール

学生時代より世界諸国を放浪。「想い(ワクワク)を形に」をモットーに、物語の視点を大切にして、地域・国を越境、医療の枠をこえて、さまざまな取り組みを展開している行動派産科医。

日本医科大学卒業。米国ロマリンダ大学(周産期生物学)、日本医科大学大学院(産婦人科学・免疫学)を経て葛飾赤十字産院勤務(東京:1994年~2005年)。周産期医療に力を注ぐとともに、JICA(国際協力機構)母子保健専門家として、ベトナム、アルメニア、ニカラグア、パレスチナ、マダガスカル、カンボジアの母子医療、思春期リプロダクティブヘルスにもかかわってきた。また、NHK「すくすく子育て」ですくすくサポーターをつとめるなど、メディア、書籍等を通して、現場からの声を発信している。

 

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